2011年7月18日月曜日

ヨーガって何? 私たちの望み…3

さて、前回、ヨーガとは結ぶ、という語源からきているという話で始まりました。
何を結ぶのか、というと、まず、「私」があります。
もう一方に何があるのか、が問題でしたね。

一つの候補としては「安全」(サンスクリット語ではアルタ अर्थ artha)です。
つまり、生きていくことの基礎ですね。
もうひとつは「喜び」=カーマ (काम kaama)  です。
これだけでも、わたしたちが生きている意味をたくさん感じられると思います。

しかし、ヨーガのもっとも重要な教え、ヴェーダンタでは、3つめがあるといいます。
この3つ目の私たちの望みとはなんでしょう?

3つ目はダルマ (धर्म dharma )といいます。
簡単にいえば法則、とでもいうのでしょうか。
ダルマ、法則は人間の決めていった「法律」ではなく、
この自然や宇宙の法則のことになります。

はたして、この自然、宇宙の法則ってどのようなことでしょうか。
こんなものをみんなが求めているのでしょうか?

たとえ話を考えてみました。

今、ここで、わたしは、写真家です。ネイチャーカメラマンです。
まず、写真家は、何かの状況を説明しようとカメラを持って、被写体に迫り、シャッターを切ります。
私は世界的にも有名な、奈良の吉野山の桜の風景を撮ります。

写真を撮って、現像して、その写真が一定のクオリティを持っていることが、売り物になり、お金になり、自分の生計を満たしてくれます。つまり、私の望みの一つである「安全=アルタ अर्थ」が写真によって満たされます。

一つ目が満たされましたが、私は写真家ですから、それだけでは満足しません。

すてきな写真を撮ることで、それが掲載されて、
それを見た誰かが「ああ、こんなところにいってみたいなぁ」なんて感想をもらって、
あるいは、何かの賞をもらったりして、
自分の写真を認めてもらうことができたら、
これは私の望みの一つである「喜び=カーマ」を得ることが出来ます。
私は、誰かに認められることで、自分を確かめることができるからです。
仕事で自分を認めてもらうことは、自分の存在を確認できることになるのです。


まだその上に、写真家は追求するべきものがあります。
いよいよ、ダルマを見つけるのです

それまでは、写真家にとって被写体は「私」が狙ってコントロールしている対象でした。
「私がそのサクラを撮ってやろう」と思っていたのです。

ところが、ダルマを見つけようとしている写真家にとって、
被写体と「私」とは共同作業者の関係になります。
この関係性の中で、写真を撮るということは、「私」が「写真を撮る」というのではなくなります。
なぜならば、被写体は「私」の思い通りになることはないからです。

サクラは、その時何百年もの生命をつないで、毎年訪れてくる季節の移り変わりを感じて、
いまここに花開いています。
今年はいつもよりも寒い冬だったかもしれません。
いつもよりも雪が多かったかもしれません。
つぼみは固く、でも確実に春に向けて膨らんでいきます。
そしていよいよこの春を迎えました。
サクラの咲き具合は、場所場所によって、違っています。
日当たりのいいところは早めに咲き始めますし、日陰になりがちなところは遅いのです。
また木一本一本によって、その性格も枝ぶりも違っています。
花には裏年、表年といって、咲き具合は年ごとに違いを見せます。
裏年の次の年だからといって、その年にたくさん花をつける、ということでもありません。

撮影のその日、狙っていた青空ではないかもしれません。
人通りは少ないほうがいいと思っていたところで、早めに団体客が来ているかもしれませんし、
あるいは観光客がたくさん来ているところを撮ろうと思っていても、その日はなぜか少ない時にあたってしまうかもしれません。


ダルマを理解している写真家であれば、
その時に出会うサクラや空や風や太陽、霧や朝もやも、雲も雨も、花見客の様子も、店先の賑わいも、観察しています。そして、その時の様々な条件の組み合わせでしかありえない、たった一枚の写真を撮ります。

これは、写真家が観察しているだけで、撮れるのではなく、
世界がそのようにあるから、そして写真家がその存在を観察しているときに成り立ちます。

写真を撮る(世界を自分の思うようにコントロールしようとする)、のではなく
写真を撮るチャンスを与えられる(世界を知り、自分がその世界との関係の中で生きている)ことを知ります。
その写真家は自分と世界の関係性を知るのです。

自分を含めた世界や宇宙には、目に見える関係性があります。
また、目に見えない関係性もあります。

関係性は、空間や時間の中で一つの秩序を持ちます。

サクラと季節には関係性があります。

季節は地球の回転と関係性があります。
地球の回転は宇宙と関係性があります。
宇宙は時間と空間の関係性があり、

時間と空間は、別別のものではなく、一つのエネルギーであることを
物理学の法則によって明らかになり、

このエネルギーはこの私の身体にも、
サクラの花びらにも、
バクテリアにも、
細胞にも、
DNAにも、
アミノ酸にも、
原子にも、
素粒子にもあることを知るようになりました。

これらの関係性、秩序、自然・宇宙の法則をダルマというのです。

私たちが生きているということは、
ここに存在しているということは、
宇宙的なエネルギーが、それぞればらばらではなく、
ひとつの調和と秩序を持って、
さまざまな関係性の中でのバランスを保つことで、

たとえ、そんなバランスを保つ力はどこからきて、どこへ去っていくのかを知らなくとも、

素晴らしい法則があることによって、
ここにこうしていることができます。

ヨーガを行う人、ヨーギーやヨギーニは、このダルマをまず見つけようとして、
このダルマに沿って生きることを一つの目標とします。



ところで、今日はヨーガ堂・山部が山登りに行こうとしていた日でした。
台風が来たから中止になったのです。

「あー山に行きたかったー」
とガッカリしていますか?

ガッカリですよね。

そんなときはめいいっぱいガッカリ気分を観察して、
そのあと、お茶を淹れて、
今日のダルマを発見してみませんか?


写真家が雨の日でも、いろんな発見をして、その時にしか出来ない仕事をするように、

ヨーギーは台風のときに、
台風でしか見られないダルマを見つけようとするのです。

2 件のコメント:

  1. 今日は一日しっかりと雨の降った日でしたね!

    先日のサットサンガでは充実した時間をありがとうございました

    これからもブログを拝見させていただきますね☆

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  2. みちよさん

    今日は本当に台風、明日もまさに台風、という台風週となりましたね。

    コメントの書き込み、先日はサットサンガの参加もありがとうございました。

    話もブログもなんだか長くって、申し訳ないです。

    もっと簡潔にまとめたいのですが……。

    修行します!

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